用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



殺す(ころす)
2012.03.01 OA


前項の『ナグリ』に引き続き、物騒そのものといった感じのこの言葉。もちろん、刃物も銃も使いません。

舞台用語としての「殺す」はいくつかの意味で使われますが、一番多いのは「モノを固定する事」という意味ではないでしょうか。釘で舞台装置を打ちつけたり、ロープで照明や幕を固定したり。「殺す=相手が死ぬ=対象が動かなくなる」というところからきた言い方でしょう。

セットが倒れてきたり照明が落ちてきたりしたら大惨事。怪我はもちろん、最悪の場合死亡事故につながる事もありえますから、ちゃんと「殺しておく」事は非常に大切。
現場では「そこ殺しとけよ!」「おい、ちゃんとできてないぞ、しっかり殺せ!」など、物騒な言葉が飛び交いますが、それは人を、芝居を殺してしまわないために必要なことなのです。

また、「マイクを殺す」「照明を殺す」など、舞台機構の機能を停止し一時的に可動しない状態にする事にも使います。動くべき時にちゃんと動く事と同じくらい、動くべきでない時には動かない状態にしておくのも大事なことですね。

緊張感と厳しさをもってやらなければならない状況で使う用語ほど、物騒な用語になっている傾向を感じます。たった一人、たった一つのミスですべてぶち壊しになってしまう総合芸術ですから、気を抜いたり手を抜いたりしないよう、強い意味を感じさせる用語が多くなるのかもしれませんね。


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