用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



初日/中日/千秋楽(しょにち/なかび/せんしゅうらく)
2012.05.10 OA


公演スケジュールに関する基本用語を3つ。最初の日を初日、真ん中の日を中日、最後の日を千秋楽(または楽日)と言います。
初日については特に専門用語でもありませんし、解説する必要はありませんね。そのまんまです。最初の日だから、初日。
中日については結構、舞台関係者でも誤解されている事がありますが、この場合の真ん中の日とはあくまでも「その公演期間の中で中間の日」ではなく、「その公演期間の中で中間の公演を含む日」です。ちょっとややこしいですね。例えば10日間の公演があった場合、必ずしも「中間の日」である5日目を『中日』と呼ぶわけではないのです。10日間の期間中に(一日に二回公演するなどで)15回の公演があったとすれば、「8回目の公演を含む日」が『中日』です。平日はソワレのみ、週末だけマチネとソワレ、というスケジュールの場合、偏りが出てきますので(日数で数えて)中間の日である「5日目」と(公演回数で数えて)中間の日である「8回目の公演を含む日」が同じ日にはなりません。そういう場合、後者を『中日』と呼ぶわけです。

さて、では最終日(あるいは最終公演)を『千秋楽』と呼ぶのはなんなのか。これについては主に二つの説があります。
1つは、雅楽が演奏されるとき、最後に舞のない「千秋楽」というタイトルの曲を演奏した事から取られたという説。この曲は仏教の法要の最後にも奏でられるので、いわばエンディングテーマとしてメジャーだったという事でしょう。
もう1つは、能の演目「高砂」を由来とする説。この高砂の最後に、「千秋楽は民を撫で、万歳楽には命を延ぶ」と歌う部分があって、そこから取られたという考えです。
雅楽の千秋楽が作曲されたのは1144年。能の完成は鎌倉後期から室町初期ですから雅楽の方が早いわけですが・・・まぁ早いからこちらが正しい、というわけでもありませんしね。
「千秋」は「とても長い月日」を意味する言葉(四字熟語にも「一日千秋」というものがありますね)。つまり千秋楽は「いつまでも末長く楽あれ」といった意味で、まぁいずれの説が正しいにせよ、縁起のよさから採用されたと思って間違いはないでしょう。

これらの用語は舞台演劇に限らず、歌舞伎や能、大相撲など各種の興行に広く使われています。大相撲では宝暦七年(1757年)の現存する最古の番付の興行日程にもすでに使われているとか。

ちなみに、舞台演劇での『千秋楽』は「秋」の字に「火」が含まれているため、縁起のいい「亀」の字を含んだ「穐」という字を使い、「千穐楽」と表記する事が多かったようです。昔の劇場は木造で、火の使用は御法度でしたから用語にも気をつかったのでしょう(「穐」という字は「秋」と同じく、「あき」「しゅう」と読みます)。
とはいえ最近は木造の劇場も少なくなり、演出で舞台上で火を使うことも多くなりましたので読みやすい『千秋楽』の方を使うことがほとんどのようです。


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