用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



大根役者(だいこんやくしゃ)
2012.07.12 OA


芝居が下手な役者の事を『大根役者』と呼ぶのは、皆さん聞いた事があると思います。
一般的にもよく知られた言葉ですが、では何故『大根』なのかはあまり知られていないのではないでしょうか。
これには諸説あるのですが、有名な説をいくつかご紹介しましょう。

まず、一つ目の説。大根は消化に良く、食べて食あたりすることは滅多にありません。一方、下手な役者の芝居も当たりません(人気が出ません)。つまり、「食べてもあたらない大根」と「演じても当たらない役者」をかけたという説ですね。

続いて、二つ目の説。下手な役者は、役を降ろされますね。大根も、すりおろして大根おろしにして食べますね。そこから、「役を降ろす」と「大根をおろす」をかけたという説。

三つ目。演技が下手な役者は人間の役がもらえず、馬の前足・後ろ足などを演じたりする事があります。そうすると、足しか見えませんよね。白い足は「大根足」という言い方をしますから、「足だけの役者=大根役者」と連想していったという説。

四つ目。大根は他の根菜と比べて大きく、重く、鈍重な感じがするので、「何年やっても芝居の勘が悪く、鈍感な役者」のことを大根に例えるようになったという説。

そして五つ目は、大根は白いという所からの発想。
素人同然の下手な芝居をする役者というところから、白い大根の「しろ」と素人の「しろ」をかけたとか。「下手な役者が舞台に出ると場が白ける」事から、白い大根に例えてみたとか。また、歌舞伎の世界では芸のない下手な役者ほど白粉を塗りたくって誤魔化す、と言われ、そこから、白いといえば大根、とつなげたという話もあります。

いずれにせよ、元々は歌舞伎の世界で使われていたものが広く用いられるようになったのは間違いないようです。
古い文献にはただ『大根』と書かれているものが多く、元々は単に『大根』と言っていたと思われます。それが後に、野菜の大根と区別するために役者とつけて『大根役者』という単語になったのでしょう。

役者であれば絶対言われたくない言葉の一つ、『大根役者』。でも、大根、美味しいですよね。華があっていつも食卓の主役に、という食材ではないかもしれませんが、煮物に漬物に、味噌汁に刺身のツマに、と重宝します。もし『大根役者』と呼ばれても、くじけず精進を重ねれば必ず、いろんな場面に必要とされる究極の『大根役者』になれるハズ!
負けるな、大根役者!がんばれ、大根役者!


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