用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



バミリ(ばみり)
2011.09.15 OA


本番の舞台上や稽古場、あるいは映像作品製作時のスタジオなどには床面や壁面などあらゆるところに、様々なテープが貼られています。これは、本番中の俳優の立ち位置や、道具の置き場所をあらかじめ決め、俳優のスタンバイや道具の転換をスムーズに行うために貼られたテープです。
そして、この「あらかじめ立ち位置を決める行為」を「バミる」、その目印として貼られたテープの事を「バミリ」と呼びます。

「バミる」とは、演出サイドが全体を見て位置を決める、つまり「場を見る」という言葉が語源と言われています。そして、そこから派生して「バミリ」という言葉が生まれたそうです。

「バミリ」は単に立ち位置や道具の置き位置を示すだけでなく、ハケる時にどこまでがお客様に見えているか、という目印にも使われます。
また、稽古場で仮の道具がない時に、「ここからは壁」「ここが階段」など、舞台装置の位置を示す目印としても使用します。
稽古場では、演技に熱中して足元のバミリが見えず、「おい、階段から落ちてるぞ!」とか「その位置だと壁にめり込んでるぞ!」という事がよくあります。そうした失敗を繰り返しながら、舞台上の距離感をつかんでいくわけですね。

「バミリ」には主にビニールテープを使用しますが、暗転中にも目印が必要な場合などには畜光テープが用いられる事もあります。このテープは明るい時に光を溜めこみ、暗闇で光るという特性を持っているため、暗い場所や暗いシーンでの目印として最適なわけです。
しかしその特性ゆえに、下手な貼り方をすると、暗転になった途端に舞台のそこかしこが光りだし、客席から見ると星空のような妙な状態になってしまう事もあります。もちろん、畜光テープに限らず、通常のビニールテープも客席から見えてしまうと興醒め。「バミリ」には細心の注意がはらわれます。
出来るだけ見えないように。見えても気にならないように。
客席からは見えないくらい小さくしたり、俳優からしか見えない舞台の奥側にだけ貼ったり、貼る面と同系色にしたり、足先で感じられるわずかな凹凸を舞台面に作ったり・・・
作品と状況に応じて、様々な工夫が凝らされています。

事細かに計算された準備があるからこそ、スムーズに舞台が進行していくわけです。
「バミリ」はそういう意味で、影の主役と言っていいかもしれませんね。


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